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89歳・八名信夫 、後輩悪役になり電車で若者注意「他人の子も叱るべき」…青汁CM秘話、89なりのもべきCM“後輩”大谷活躍喜びスポーツ報知
悪役として歩んだキャリアの誇りを語った八名信夫(カメラ・頓所 美代子)

 名悪役として日本映画やドラマを支えてきた八名信夫(89)が 、歳・俳優人生65年を迎えた 。名信秘話今年8月の誕生日に出版した自伝「悪役は口に苦し」(小学館刊)では  、夫悪プロ野球選手を経て 、役に意人セビ 滅映画の世界で悪役として活躍する異色の人生をつづっている 。電車大谷役者としての信条や、叱る現代社会の風潮への憂いから「こういう時代だからこそ“悪役”が必要」と思いを語った 。青汁(奥津 友希乃)

 180センチ超えの長身に、活躍ボルサリーノ帽子とサングラス姿はさすがの迫力。喜び6年の記者人生で 、後輩最年長のベテランの取材を前に、89なりのもべきCM唾ののみ込み方がよく分からなくなるほど緊張した 。歳・喫茶店に入り、名信秘話ちょ も す八名が注文したのはコーヒーフロート 。「悪役がアイスクリームだってよ」とおどけてみせ 、「な~んでも聞いて」 。優しい笑顔に肩の力がすっと抜けた。

 異色のキャリアの持ち主だ 。俳優デビュー前は、東映フライヤーズ(現日本ハム)の投手だった 。「ダルビッシュも大谷翔平もみんな後輩なわけ 。だけど 、あっちの方が選手としては 、だいぶ偉い。もうこっちは腰を低~くしてテレビで活躍ぶりを見てますよ 。本当にすごいよ」と目を細める 。

 幼少期を戦時下で過ごした 。野球との出会いは終戦直後 、疎開先にシラミ駆除のためDDT(殺虫剤)をまきに来た米軍が、キャッチボールをする姿に「あんなに面白いものがあるんだ」と衝撃を受けた 。見よう見まねで「生のサツマイモを丸く切ってボールにして、おふくろに軍手を重ねて縫ってもらってグラブにした」。それが野球の原点だ 。

 地元の古豪・岡山東商を経て明大野球部に入部。強烈なしごきに遭い中退し 、東映に入団した 。だが 、登板中のけがにより3年で選手生命を絶たれた 。「来季は契約せんから、映画の方へ行け」と球団オーナーの指示で親会社・東映で俳優に転身 。「もし大洋ホエールズに入団していたら、引退後は鯨を追っかけてたかもしれないな」と豪快に笑う 。

 全く想像もしていなかった俳優の道 。俳優座に稽古に行くと「鏡の前で黒タイツ姿の男たちが脚を上げて踊ってた。『ワシはこんなの無理だ 、やめたい』と所長に伝えたら、『バカ野郎! 高倉健だってああして訓練して今日の存在があるんだ』とひどく怒られたね」 。

 撮影所で勉強の日々を送り、端役で映画に出演。テレビの時代劇で主役も演じた 。ある日、ふと「悪役は早く死んで次々といろんな作品に出られるんだ」と気づき、活路を見いだした。大柄の体格を生かした迫力ある殺され方や 、すごみのある表情で「仁義なき戦い」シリーズなどで重宝された 。

 スター俳優に斬られ撃たれ、邦画の一時代を支えた。“殺された数1200回以上”は誇れるキャリアだ 。

 「悪役っていうのは死にゃ死ぬほど生きていける。だけど媚(こ)びた目はだめ 。殺されにいくんじゃなく 、殺しにいく目で演じる  。悪役がかっこよくなきゃ 、主役は引き立たないんだから」

 演技は感覚派ではない。多くの洋画も研究し 、緻密(ちみつ)に徹底的に“悪”を追求した。「俺の悪役はひと味違うんだ  。普通の殺し屋はブランデーをあおるところを 、俺は牛乳を飲んだ。それが薄気味悪く映るんだ」と、手元のコーヒーフロートをかきまぜながら不気味に笑う。

 83年には悪役にも光を当てるため 、悪役俳優を集めた集団「悪役商会」を結成。原宿にタレントショップを構えるなど人気を博した。「悪役以外の役でも世間を驚かせたい」と舞台で女性役を演じるなど新境地にも挑んだ 。「女のしぐさが板に付いちゃって 、ギャング映画で拳銃を撃つ時に小指が立ってNGを出したこともあったな」と懐かしむ  。

 90年から出演した青汁のCMでも人気者に 。「う~ん 、まずい 、もう一杯 !」の決めぜりふには、裏話がある。当初台本には「こいつは悪役にもいいな」というセリフが書かれていた 。

 「CMの日に初めて青汁を飲んでみたら 、まずくて驚いた 。だから俺は『正直に 、まずいって言ったらどうですか?』と提案したら、お偉いさんが会議を始めて『いいですけど、フォローしてくださいね』って 。それで 、とっさに『もう一杯!』ってフレーズを思いついたんだ。あれはウケたな~」

 先月89歳を迎えた 。近年は東北や熊本の被災地で自主映画製作や 、能登半島地震に遭った日本航空石川野球部にボールを贈るなど支援を行っている 。心根の優しさからか、俳優業に意欲はあるものの「最近、顔が変わっちゃったもん 。優しくなっちゃった」とはにかむ。

 悪役として、作品で数々の“死”に直面してきたが 、「実際の死は怖いのかもしれないなあ」と少し遠くを見つめる 。戦争を繰り返す世界情勢 、そして日本社会にも気がかりなこともある  。

 「思いやりが足りないでしょ。この前も電車に乗ったら、ばあちゃんが立ってて、座った若者はこれ(=スマホ)に夢中で。俺が声を掛けても反応がない」

 一呼吸置くと、目の鋭さが増した 。「そういう時に悪役になるの 。『おい、立ったらどうだ』って」とドスの利いた声を響かせる。「他人の子どもを叱っちゃだめなんておかしい。他人でも愛情を持って大人が叱って、守ってやらないと 。こういう時代だからこそ“悪役”が必要なのかもしれないね」

 命ある限り  、悪役の矜持(きょうじ)を貫くつもりだ。

 ◆八名 信夫(やな・のぶお)1935年8月19日 、岡山市生まれ。89歳。明大中退後の56年 、東映(現日本ハム)に入団。58年に腰の故障で退団後 、俳優に転身。59年 、映画「遊星王子」でデビュー。数々の映画やドラマ、舞台で悪役を演じ 、キューサイ青汁のCMでお茶の間でも人気を呼んだ 。主な出演作は映画「飢餓海峡」「居酒屋ゆうれい」 、連続テレビ小説「純情きらり」など。

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